東方紅月歌
 -The Fragments of Sealed Memory- 


第一章 出会い


紅魔館日記 ○X△▲年○□月□■日

 あの時、お嬢様に出会ったのは、わたしが誰かに会いたいと願っていたからなのかもしれない。
 ここ、幻想郷と呼ばれるところへ辿りついたのも、わたしがそうありたいと願っていたからなのかもしれない。
 でも、これは、そうであって、そうではない。
 わたしは、誰にも必要とされていなかったのだから……
 わたしは、きっと、忘れられた、存在なのだから……
                                     E.Q.


  …………

 今から時を遡ること百年余り。
 とある国では大規模な捕獲作戦が繰り広げられていた。

「魔女狩り」

 摩訶不思議な力でもって人々に様々な影響を与えてきた彼女らは、急速な時代の進化の流れに乗ることが出来ず、やがて、取り残されていった。
 世間の人々が彼女らの持つ不思議な力よりも科学といった自分たちにも理解ができる力に目覚め、頼るようになると、自然と彼女らの力に対して疑問を感じ始めるようになった。

 あの力はいったいどうやって生み出されるのか?
 どこかにタネがあるに違いない。

 人々は必死になって、手に入れた科学の力で彼女たちの力を解明しようと懸命になった。しかし、どうしても力の根源たる部分を証明する、ましてや見つける事すら出来なかった。
 その結果、人々はその謎に満ちた力がいずれ自分たちを脅かすに違いないと考え始めた。そして、人々が取った手段は彼女らをこの世界から追放することだった。自分たちの生活を脅かす悪い存在として彼女らを『魔女』と称し、あたかも自分達が正義であるかのように、『魔女狩り』という大義名分を掲げて彼女らを捕らえ、次々と処刑し始めた。

 そんな時代であるがため、彼女も魔女に認定され、住む街を追い出されることとなるのである。
 彼女の名は、『クウィンティア・エルディーネ』。
 エルディーネは幼くして親をとある理由で亡くし、街で一人暮らしをしている十代の少女である。つやのある黒髪を後ろで束ねた髪型が特徴的な彼女は大層歌が上手で、道端で歌を歌えば、外見の可愛らしさも手伝ってか、すぐに人だかりができるほどの人気を集めていた。心地よい彼女の歌声に街の人たちはいつもうっとりとして耳を傾けていた。その所為もあってか、いつしか彼女の歌声は「安らぎを与えてくれる天使の歌声」とまで言われるようになっていた。
 しかし、事件が起こってしまう。
 ある日のこと。エルディーネは街の噴水に腰掛けて歌を歌っていた。その光景はいつもと変わらない日常の、ほんの一部分のはずだった。

 そう、あの時、あの瞬間に顔を合わせるまでは。

 歌を歌いながら、いつも聴きに来てくれている若い男性の姿を確認したエルディーネは、自分の心の中にほのかな気持ちが芽生えていることなどまだ気付かずに、ほんの少し気持ちを込めて歌い続けた。そして、彼とふと目が合った瞬間、
 その男性はすぅっと消えてしまった。
 一瞬、誰もが目を疑った。誰一人として何もしていないにも関わらず、一人の若者が一瞬のうちに消えてしまったのだ。
 わずかな静寂を挟んで、人々は一斉に大声を上げて逃げ惑いだした。当然ながら歌っていたエルディーネ自身も驚いた。自分の歌を聴きながら人が消えていったのだ。しかも、目を合わせた瞬間に。エルディーネは何がなんだかわからず、その場を逃げるように去っていった。

 これがいけなかったのだ、とエルディーネは後で後悔することとなる。

 次の日には彼女を見る街の人の目には怯えがあり、中には「殺される!」などと叫んで逃げるものまで現れたのだ。ゆえに、エルディーネは一歩も外に出ることが出来ず、ただひたすらに家の中で過ごすしかなかった。大好きな歌を歌うことも出来ずに。

 程なくして、エルディーネは「魔女」に指定された。

 そして、役人に身柄を引き渡される日、街の住人達がエルディーネの家を訪ねてきた。いよいよ捕まる日なのね、とエルディーネは覚悟を決めて家を出た。ところが、住人達はエルディーネの姿が現れるとすぐに自分達の姿で彼女を隠し、そのまま街の裏口へと移動し始めた。移動している途中で、彼女を取り囲む住人たちのうちの一人が、これまでの街への貢献もあったので捕まえて役人に突き出すことはせず、役人に見つからないように街を追い出すことに決まったと言うのだった。さらに、いなくなってからの行方については皆で口裏を合わせておくことも決まったのだという。
 それを聞いたエルディーネは涙を流して街の人達に感謝した。何度も何度も、ありがとうございます、ただその言葉を繰り返しながら。

 さて、街を追い出されたエルディーネにこれからの行く当てがあろうはずがない。彼女は役人から逃げ隠れるための場所を探し、街の近くにある森の奥深くへと入っていった……

 …………

 そして、さらに時は止まることなく進み続ける。

 彼女が森で生活し始めてから既に5年が経過しようとしていた。このとき、まだ幼かった少女から大人の雰囲気を纏い始めたエルディーネに転機が訪れることとなる。
 ある日の朝、いつものように近くの湖へと水を汲みに行こうとしたときだった。
「今日はやけに森が騒がしいわね」
 いつもと何かが違う。そんな違和感を抱きながら湖の畔まで出たとき、エルディーネは信じられない光景を目の当たりにする。
「!! な、なに、あれ。いつの間にあんな建物ができたっていうの?私、まだ夢でも見ているのかしら」
 光景の変化よりも自分の変化で納得しようとするエルディーネだったが、すぐにそれは違うことに気付くこととなった。澄み渡る空に異質な黒い影。それは空からやってきた。
 空飛ぶ『妖怪』である。
 さすがに彼女もこの光景に対して自分を疑うことはしなかった。彼女は慌てて森へと逃げ込み、木の後ろに隠れると、『妖怪』がいなくなるのを待った。
「じょ、冗談にもほどがあるわ!何なの?これ!一体どうなっているのよ!」
 エルディーネは水を汲むのも忘れて家まで走っていった。

 ――「魔女」の時代が終わりを告げる頃、彼女もその存在を忘れ去られるようになっていた。
 時代の忘れ物となった彼女に待っているものは、見つけてもらうための努力からくる生への執着か、それとも忘れ物のまま生き続ける時の放浪か……

 幻想郷

 そこに在ったかもしれない、でもなかったかもしれない。そんな幻想の産物となったものたちが集まる場所。
 エルディーネは時代の流れから切り離された結果、幻想の産物となってしまったのだった。
 それは彼女の意思か?
 それとも幻想郷が彼女を招き入れたのか?
 どちらが正しいかは定かではないが、確かに彼女は今、幻想郷の住人として存在している。すでに彼女は時の放浪者の道を進んでいたのだ。

「一体、ここはどこなのかしら?昨日は確かにあんなお屋敷なんてなかったわよ?それにあの変な化け物!あー!わかんないっ!」
 家に帰ってもまだパニックに陥っていた彼女は、あれこれ叫びながらうろうろと家の中を歩き回っていた。あまりの環境の変化に頭の中が追いついていない状態のようだった。
「と、とにかく落ち着かなきゃ。それからもう一度事態の整理と、周りの確認をしないと」
 すぅ〜、はぁ〜、すぅ〜、はぁ〜。
 深呼吸をすること数分間。ようやく落ち着いてきたエルディーネはひとまず椅子に座ることにした。そして、少しこれまでのことを振り返ってみる。
「ふぅ。それにしても、突然のこと過ぎて何がなんだか……」
 わかってはいるけれど、それでも一縷の望みにかけて自分を疑ってみた。簡単に醒めるとは思えないが、慣例にしたがってみる。
「わたし、やっぱり夢をみているんじゃ…… 痛たた……やっぱり、夢じゃないわよね……」
 結局、残ったのは頬を抓った痛みと、未だに状況がつかめない自分だった。
 しばらく考え込んではみたものの、やはり状況を確認するためにはもう一度現場へ戻るのが一番だと判断をすると、先程忘れていた水汲みのこともあるので、エルディーネは再びあの湖に行くことにした。

「んー、どうやら森の中には変な奴らはいないようね」
 恐る恐る外に出てみたが、さっきの騒々しさはどこへやら。意外と静かな『昨日までと変わらない』いつもの森であった。
「うーん、なんだか緊張のせいか、体がガチガチだわ」
 リラックスをする為に彼女は体をひねったり、伸びをしたり、”飛び跳ねたり”した。
 そのときである。
「えっ?う、うわっ! わたし、浮いてるじゃない!」
 普通の人間ならば、ここで自分の突然の変容に対してパニックになってしまうところだろう。しかし、エルディーネにとってはこの新たな能力の発覚に対してさしたる驚きはなく、逆にうれしさが込み上げてきていた。それは、自分の能力が一つ"追加"されたからに他ならない。そして、何故さらなる能力が現れたのかとも思わない。なぜなら、彼女はすでにあの能力を持っているからである。
 それは、エルディーネをこの境遇に強いた隠れた力。人一人をあっけなく消し去った恐るべき力。彼女はあのときから自分の能力について研究を続けていた。そして出した結論は、
「まさか、わたしに『安らぎを与える能力』以外にも力があったなんてね」
 『安らぎを与える能力』と彼女は名づけた。聞こえは良いが、全ての物質が安らぎの中にあるとき、それはあまりに自然すぎてそこに在ることすらも認識できなくなる、究極の物質安定化能力なのである。それが『安らぎ』という意味なのだった。
 これまで試してきた中でわかったことは、『安らぎ』にも強弱が有るということであった。眠りに誘うことから、それこそ存在を忘れさせる、つまり消し去ることができるところまで。すでにエルディーネは歌に含まれるその能力をほぼ完全に操ることができるようになるまで昇華させていた。だが、実際に使うことは自ら禁忌としていた。今でも思い出される。あっけなく消えたあの人のことを。
 エルディーネは新たに手にした力を使い、ふわりふわりと飛びながらまっすぐ湖へと向かった。
「これで水汲みも便利で楽チンね♪」
 うきうき気分で森を通り抜けると、そこはやはり先程の紅い建物が見える湖畔であった。目をこすっても、目を何度も瞬いても、その建物はそこに在り続けていた。間違いなくそこにあるのだ。
 雲ひとつ無い晴れ渡った空の下にそびえる建物はより一層赤く、周りの緑ときらきら光る水面とでさらに赤が紅く映えて見えた。まるで、建物自身がエルディーネを誘うかのように……
「それにしても、鮮やかな赤が綺麗な建物よねぇ。よし!あとであの建物へ行ってみましょ」

 今度は無事に何事も無く日課の水汲みを終えることができた。すぐさまエルディーネは妖怪に出会わないようにそそくさと森の中に走っていった。力はあれど、まだ実戦経験のないエルディーネにとって妖怪は恐ろしいものであった。例え持っているその能力がいかに強大であったとしても。

 …………

「♪〜とんで、と〜んで〜♪」
 朝食を済ませたエルディーネは前言の通り、湖の側にそびえていたあの紅い建物へと向かっていた。そして、今は湖を飛びながら渡っているところである。
 先程手に入れた『空を飛ぶ能力』にエルディーネはすっかりご機嫌の様子であった。よっぽど気に入ったのか、いつもは歌を歌わないようにしてきた彼女だったが、今日は歌いたい気分になったようだった。能力が決して発現しないように自ら制御はしているものの、まだ完璧に制御できるところまで出来ていなかった。だから、歌いたくても歌わないようにしてきた。でも、今日は、何故か、歌いたくなったのだ。
 歌を歌いながら空を飛ぶ。警戒するのは自分自身の能力へだけではない。周りへの警戒も怠らない。いつなんどき妖怪に襲われるかわからないからだ。
「なんて、こんなときに限って妖怪が出てきたりしてね」
 大抵こういったことを言っていると向こう様から現れるものである。

 ギギャーッ!!

 案の定、一匹の空飛ぶ妖怪が奇声を発しながら襲い掛かってきた。
「きゃあ! やっぱり、そうなっちゃうのね……」
 はぁ、とため息を吐き、いま自分が湖のどの辺りを飛んでいるのかをさっと見回して判断する。どうやらすでに湖の真ん中を過ぎていたため、引き返すことは得策ではなくなっているようだった。
 ならば、と彼女は今出せる全速力で対岸に見えている紅い建物を目指すことにした。
「あ、あそこなら隠れられるわね。それまで力がもてばいいんだけど……」
 スピードを上げて湖面の上を飛ぶ。だが、さすがに先程手にしたばかりの力だけあって、スピードに力を入れると今度は方向に対するコントロールができないといった不安定な飛行であった。
 何とか対岸まであと少しというところまでやってきたが、彼女と妖怪の追いかけっこはまだ続いている。そしてエルディーネは焦りを感じていた。先程から妖怪が彼女に向けて弾幕を放っていたのだった。
「うわっとっと! うーん、しつこいわね!こっちは何も出来ないのに!」
 右へ左へ、上へ下へ。一回一回の妖怪の放つ弾幕を何とか避け続け、ようやく紅い建物の門が見えるところまでやってきた。紅い建物はその周りを大きく塀に囲まれており、非常に広い敷地を有しているようだった。
 門に差し掛かったとき、急にあたりが暗くなり始めた。空を見上げてみると、先程までの快晴とはうって変わって、厚い灰色の雲で覆われ始めていた。
 まるで誰かが太陽を隠そうとしているかのように。
 門番のいない門を上から飛び越し、敷地内まで飛んできたエルディーネには、もうこれ以上飛び続けるだけの力はなかった。ずっと全速力で飛んでいたので、スピードをほとんど殺すことができないまま、転がりながらの着地となってしまった。その拍子にあちこちを擦りむいてしまったが、その痛みも気にせず必死に建物の入り口を目指して走り出す。
「はぁ、はぁ。あ、あと少し。あと少しで助かるわ!」
 何度も何度も転げそうになりながら夢中で走り続けた。
(あと少し、あと少しで玄関にたどり着く!)
 しかし、その『あと少し』というところだった。
 玄関前の階段を駆け上がり始めたとき、突然、目の前がふわっと紅く染まった。
「う、う、そ!」
 エルディーネは愕然とした。紅いオーラを放ち、黒い翼を持ったいかにも『悪魔』のような"少女"が目の前に現れたのだ。
 状況は最悪だった。後ろにはしつこい妖怪、前には紅い悪魔の少女。絶体絶命と覚悟した。
「フフフ…… あんなにフラフラになりながらもよくここまで辿り着けたわね」
 悪魔の少女は、クスクスと笑いながら、エルディーネを見つめたまま階段を下り始めた。つられてエルディーネも少女を見つめたまま階段を下りていった。
 一定の距離を保った状態で二人が階段を下りきったとき、奇声を放ちながら妖怪が襲い掛かってきた。奇声を聞いて怯えるエルディーネに対し、悪魔の少女はなおも顔に笑みを浮かべたままで、
「フフッ、久しぶりにおもしろいものを見せてもらったわ。これはそのご褒美よ」
 少女はその小さな両手を前にバッと突き出した。するとそこに現れたのは、輝く紅い槍。
「わたしもおもしろいものを見せてあげる。気に入ってくれるかしら?」
 悪魔の少女はその槍を掴み、投げる体勢を整える。
「神槍!『スピア・ザ・グングニル』!!」
 そう宣言された瞬間、槍はまばゆいばかりの紅い輝きに包まれた。自分の身の丈をはるかに越えるほどに長く伸びた紅い槍を、少女はエルディーネ目掛けておもいっきり投げつけた。
「きゃー!!」
 ギャー!!
 どちらが先に叫んだか?そんな一瞬の出来事だった。
 ブウォン、という音を立てて放たれた紅い槍はエルディーネではなく、彼女のすぐ後ろにまで迫っていた妖怪に突き刺さったのだった。そして槍は妖怪とともに灰色の雲を突き破り、消えていった。
 あまりの恐怖で目を瞑ってしゃがみこんでしまっていたエルディーネはあたりが急に静かになったことに気付いた。
 しゃがんだままで恐る恐る顔を上げると、あの紅い槍を放った悪魔の少女はいないのか、と目だけで探してみた。しかし、悪魔の少女の姿はどこにもなく、そこには一枚のカードが落ちているだけだった。
 おそらく悪魔の少女の落し物だろう、と、落ちているカードを拾おうとした。
「一体、誰だったのかしら? ……あ、あれ?急に、眩暈が……」
 エルディーネは突然、ドサッとその場に倒れこんでしまった。とうとう、先程までの力の消耗に体が耐えられなくなってしまったのだった。

 …………

「ん…… ここは……」
 目が覚めると、そこはまだ紅い建物の前だった。
 灰色の厚い雲に覆われていた空は既に夕焼け色に染まっていた。
「うっ、痛たた…… どうやら助かったようね。それにしても、これはかなりの間気を失っていたみたいね。もう夕方だし」
 空を見上げて夕焼けを見ていると、あの光景が思い出された。目の前に広がった恐怖の紅い光と、ニヤリと笑う悪魔の少女。
「普通だったら倒れている人を見かけたら、お屋敷の中に入れてくれそうなものなんだけれど。まさかそのまま放置されるだなんて思わなかったわ。あっ、もしかして、ここまで来て入館拒否!?」
 拒否されたと決まっていないにもかかわらず、ショックを受けたエルディーネは、屋敷に後ろ髪を引かれながらも仕方なく家に帰ることに決めた。今これ以上この館を詮索することは自分の身を危険にさらすことになりかねない。
 さて、我が家はどれほど遠いのか、と湖の方を見る。
「うわー、改めて見てみると結構遠いのね」
 妖怪に追われていたとはいえ、よくここまで飛んでこられたものだと感心するエルディーネだった。
 遠く離れた家を見やりながら、帰れるだけの力がまだ残っているかを確認してみると、気を失ってから時間は十分に経過していたので、力はそれなりに回復しているようだった。
「でも、湖を突っ切ったらまた同じ目に会いそうだし…… 仕方がないわ。湖岸に沿って帰ろうっと」
 エルディーネは夕日で一層紅さが増した館をもう一度ぐるっと見回した後、湖に向かって飛んでいった。
 それにしても思い出すだけでもぞっとするような体験だった、とエルディーネは思う。今まで体験した出来事の中で二番目に恐ろしいものだっただろう。一番はもちろん、あの事件であるのは言うまでもない。

 かくしてエルディーネは運命の糸に導かれるままに、突如現れた紅い館に近づくことになる。この出会いが決定付けた彼女の運命。それを一手に握る一つの影が、去り行く彼女をじっと見下ろしていた。
「……ふふふ」




 さて、ここは現代。紅魔館の地下に構える図書館である。

「出会いって不思議なものですね。ちょっとしたきっかけなんですよね」
 咲夜は日記から目を逸らし、ぼぅっと遠くを眺めた。
 自分とレミリアとの出会いを思い出しているのだろう。自分の出会いはどうだったか、と。
「あなたも相当変わった出会い方だったわよね。ふふふ……」
 パチュリーも咲夜を見て思い出したのか、クスクスと笑っていた。その姿を見て咲夜は、
「そんなに変わっていたのでしょうか?わたしは必死でしたから、そこまでの余裕なんてありませんでしたわ」
 と、少し恥ずかしそうにしていた。その姿を見てまたクスクスと笑うパチュリーであった。

「一般的な出会いなんて求めていないのよ。あの娘はね」


  第一章 出会い 終わり




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