東方紅月歌
 -The Fragments of Sealed Memory- 


第三章 安らぎを与える能力 

 紅魔館日記 ○X△▲年○×月■▼日

 幻想郷には、人間と妖怪が共存している。
 妖怪は人間を喰らおうとし、人間はそんな妖怪を退治しようとする。
 この関係は、幻想郷のどこででも起こっていることであって、至極当たり前なことである。
 だから、力では弱い人間は身を守る術を武器という形で持っている。
 では、武器を持たないものは?

 当然、喰われるだけ。

 でも、人間の中でも武器を持たず、特殊な能力でもって身を守ることが出来る者がいる。

 そう、わたしのように……

 …………

 ティアが幻想郷に移り、そしてレミリアの僕となってから数ヶ月。
 幻想郷での生活にもようやく慣れ、紅魔館という新たな環境にも慣れてきた。

 そんなある日のこと。ティアは箒、雑巾、そして水の入ったバケツを持って、紅魔館の廊下に立っていた。長い廊下の先を見つめて気合を入れる。
「さて、今日も頑張りますか!」
 単に掃除と言っても、紅魔館の掃除は尋常ではなかった。まず第一に、廊下が無駄に長い。これはここに初めて来た時から感じていたことである。第二に、それに合わせるように、部屋の数がものすごく多いこと。ティアは、客など来るはずもない館にある部屋を何故掃除しなければいけないのかといつも思っていた。第三に……と続けたいところだが、どれもこの館が広いが故に出てくることであったので、割愛させていただくことにしよう。
 それだけ尋常ではない量の掃除を、ティアは曜日で分けて少しずつこなしていた。紅魔館の構造を考えて区画を作り、七日で一周できるように設定したのだった。
 この作戦の効果は絶大で、ちょうど一周したころにはまた汚れているのだった。誰も訪れないのに七日でほこりやらが溜まることに関しては若干の不満はあったが。

 今日はちょうど七日目。一週間の最後の日。この日はレミリアの部屋を含めた、二階の重要区画の掃除だった。だから、他の六日間とは違い、特別に気合を入れておかなければならない。
「まずは、カーテンを開けてと……」
 レミリアは吸血鬼であるため日光を嫌う。ゆえに、紅魔館では、日中はカーテンが閉めっぱなしになっていた。唯一日光が入るのが、この掃除の時であった。
 ティアはすでに慣れた手つきで掃除を進めていく。
 カーテンを開けたら、廊下の掃き掃除、窓拭き、それが終わったら扉を拭く。そして、再びカーテンを閉めたら今度は部屋の中へと移動する。移動したらまずは部屋に光を入れる。それから廊下と同じ手順で掃除をしていった。

「あとは、レミリアお嬢様のお部屋だけね」

 何事もなく掃除が進めば、昼食の時間までには全てが終わるようになっていた。ところが、いつも何かしらの邪魔が入ってしまうため、昼食どころか、仕舞いにはレミリアの目覚めの時間にまでずれ込むことも少なくなかった。
 何かしらというのは、紅魔館に忍び込んだ、あるいは紛れ込んだ妖精たちとの、

 戦い

 ティアは紅魔館に勤め始めてからというもの、一度もまともに戦ったことがなかった。それは、相手がどんな下級の妖精であってもである。
 ではどうしていたかと言うと、戦うことはせず、いつも逃げてばかりいたのだった。そして、姿を隠し、相手をやり過ごせるまで息を潜めていた。大抵はこれでやり過ごせるのだが、時々、どうしても逃げ切ることが出来ず、最後は、騒がしさに目が覚めたレミリアに助けてもらうことも少なくなかった。
 レミリアもこの事態をみすみす見逃すつもりは無かった。そして、このティアの性質を改善しなければいけないと感じていた。なぜならば、この幻想郷という場所で人間が生きていくためには、自分を守れるだけの『力』が必要だと考えていたからである。
 無論、ティアに『力』が無いなどとは思っていなかった。力があるからこそ、次は生き抜くだけの力の使い方が必要だということも考えていたのである。だが、まだ力が発現するところを見ていない以上、むやみに刺激することもないだろうと思い、今まで放置してきたのだった。

 だが、それも、今日までである。

 ティアはレミリアの部屋の扉をノックすると、返事がないことを確認してからゆっくりと扉を開けて中に入った。
 ギギギ・・・・・・
 やや建てつけが悪いのか、それとも扉が古いからか。扉は音を立てながらゆっくりと開く。
「待っていたわ、ティア」
「! お、お嬢様!」
 突然声を掛けられて驚くティアは、
「お、起こしてしまいましたか。申し訳ありませんでした」
 勢いよく頭を下げて部屋を出ようとした。ところが、レミリアの一言によってそれは遮られることとなった。
「待ちなさい、ティア。私は"待っていた"と言っているのよ」
「? いかがなさいましたか?」
 レミリアは腰をかけていたベッドから降り、ゆっくりと歩きながらティアに近づいた。
「さて、私がわざわざあなたを待っていたのは他でもないわ」
「?」
 ティアには、まだレミリアが自分に対して何をしようとしているのかが分からなかった。首を傾げて悩んでいると、レミリアはティアの前までやってきていた。そして、腕を組んでティアを見上げる。
「ティア。このところ、私の城であるこの紅魔館に侵入者が入りすぎているわ。これは由々しき事態だと思わないかしら?」
「はい、確かにそうですね。この一週間の間に20回以上の侵入を確認しています」
「そう、そんなに入っていたのね。じゃあ、私が直々に排除したヤツの数は?」
 ティアは、う〜ん、と顎に指を当てながら思い出すように天井を見上げる。
「確か……10回以上ですね」
「13回よ。私が手を出したのだからそれくらいは覚えているわ」
「だったら聞かないでくださいよ……」
「そうじゃないわ。私が言いたいのはあなたの記憶力ではなく……」
 レミリアは組んでいた腕を解いて、人差し指の尖った爪をティアの胸に軽く突き刺した。
「あなたの"非力さ"が問題なのだと言っているのよ」
 ティアは一歩、後ずさりをした。それは、これまでずっと覆い隠してきた部分を思いっきり引き剥がされた思いがしたからだった。
 なおもレミリアはゆっくりと爪をティアの胸に突き刺していく。
「う、あぁっ」
 痛みに耐えられずにティアは軽い呻き声をもらした。
 プツン、という軽い音と抵抗が僅かに緩んだ感覚がしたところで、レミリアはスッと指を引き抜いた。爪にはほんの僅かな赤い液体が付着しており、レミリアは指をくわえてニヤリと笑った。ティアのメイド服の胸の辺りには僅かな赤い点が出来、じわりとその面積を広げていた。
「まだ、その時間ではないのではありませんか? お嬢様」
 ティアは胸に染み付いた赤い円を押さえ、レミリアを見下ろした。
「ふふ、生きている間に味をもう一度確かめておきたくてね。死ぬ間際では、味も雰囲気も半減だもの」
 レミリアが何を考えているのかさっぱり分からないティアは、レミリアが話した内容をもう一度確認するように反芻した。
「わたしが生きている間に? 死ぬ間際では味も雰囲気も半減? お嬢様、何を仰りたいのですか?」
「その通りだけれど? 戦えないダメな僕を私が教育してあげようと言っているのよ。そこで死に掛けて、あるいは死んでしまっては折角の若い娘の血が手に入らないでしょ?」
 レミリアの言葉は、ティアを全身の毛が逆立つのが分かるほどに、強烈な身震いをさせるに十分だった。今まで避け続けてきたことがとうとう破られる時が来てしまった、と。しかも、レミリアはかなり本気で来ることが、最悪の場合の自分の末路を聞かされたことで理解できた。

 ティアはまだあの時の場面を今でも夢に見ることがあった。
 一方的だったけれど、よく知る男性の突然の消失。
 その後の自分に対する街の住人の態度の豹変ぶり。
 自分だけでなく、他の多くの人たちに影響をもたらした自分の能力が今も変わらず憎らしかった。
 こんな力さえなければ街を追い出されることもなかっただろうし、こんな変わった世界に転がり込むこともなかっただろう。
 それもこれも、この『安らぎを与える能力』があるからに他ならない。
 自分で付けた名前がどうにも皮肉っぽくて笑えてくる。自らの力を封印するための研究が、逆に自分の力を高めることなったことも、今となってはお笑い種である。

「わたしは、お嬢様と戦うことは出来ません」
「でしょうね。そう言うと思っていたわ。まぁ、あなたのこれまでの逃げっぷりを見ていれば、誰でもわかるというものよね」
「では、もう時間を無駄にする必要はないでしょう。掃除をさせていただきますので――」
「ティア! この私が直々に相手をしてあげると言っているのよ? 断る権利など今のあなたにはあるはずがないわ」
 ティアは持っている箒を握りなおすと、箒の先をレミリアに向けた。
「そうですか……でも、申し訳ありませんが、わたしは内に秘める力を使うことはいたしません。どうしてもわたしのお相手になられるのでしたら、わたしは能力ではなく、武器であなたを迎え撃ちます!」
 レミリアは箒を自分に向けるティアの姿を見て、堪えることができずに大笑いをした。
「アハハハッ!! このレミリア・スカーレット、今までそう言って向かってきたヤツを数え切れないほど葬ってきたわ! おまえも、その仲間になりたいと言うのかしら?」
 今までに見たことの無いレミリアの大笑いと身の毛もよだつ圧倒的な威圧感に、ティアは冷や汗が止まらなくなっていた。頬を伝う汗を軽く拭き、ゴクリと生唾を飲む。
「そう、そうよ、それ。今までのやつらと寸分違わぬその仕草。おまえもやはり同じだったということなのね」
 レミリアはそろそろ挑発もいい頃だろうと思い、手招きをした。
「さぁ、かかってらっしゃい。その武器とやらで私を倒せるかどうか、試してみなっ!」
「ハァッ!」
 ティアは箒を両手に持って思いっきり振りかぶった。そして、レミリアの脳天目掛けて振り下ろしたが、バシンという激しい音と共に箒の柄はレミリアの小さな手のひらで受け止められてしまった。
「くっ!」
「ふふっ、非力だわ」
 レミリアは受け止めた箒を横へと振り払い、開いている手から血のように赤い弾を打ち出した。
「ぐぁっ!」
 ティアは見事に全ての弾を腹部に喰らい、吹き飛ばされた。
「げほっ、げほっ」
 むせ返る間にもレミリアがゆっくりと近づいてくることを感じ、何とか立ち上がって箒を構える。
 そんなティアの姿を見て、レミリアは、はぁ、とため息を吐いた。
「まだそんなやわな箒で私とやり合うつもりなの? 感心と言うよりは呆れるわね」
「わたしは、あの力を出さないと心に誓ったのです。ですから、もしこの箒が使えなくなっても、それでもわたしは能力などに頼らない!」
 ティアはグッと箒を握る力を強めると、再び振りかぶってレミリアとの間合いを詰めるように走り出した。
「でやぁっ!」
 今度は、レミリアは手を出して受け止めることも、避けることもせず、ただじっと立ち続けていた。
(もらった!)
 振り下ろした箒は見事レミリアのピンクの帽子を真ん中で分けるように叩きつけていた。だが、肝心の中身のレミリアはというと、微動だにせず、まだ立っているだけだった。
「ふ、ふふっ! 案外打たれ弱いのね、頭の方は。痛みで声もでないなんて――」
「そうか? 何か小枝が落ちてきたような感じがしただけだったんだがなぁ」
 レミリアはニヤリと笑いながら顔を上げ、ティアを見つめる。そして、頭に叩きつけられた箒を両手で持つとそのまま振り上げた。
「ふんっ!」
「うわっ!」
 ティアは、箒を力いっぱい握っていたので、簡単に手放すことが出来なかった。そのままレミリアに持ち上げられるように体が浮き上がってしまった。そこでようやく手が離れたのだが。
「武器っていうのはな、こう使うんだよっ!」
 レミリアは箒を片手で持ち、そのまま箒をティア目掛けて投げつけた。
 箒から手を離してしまったティアは完全に無防備状態となっていた。ろくに防御することも出来ず、箒はまたもやティアの腹部に突き刺さり、ティアは部屋の壁まで飛ばされてしまった。
「がはっ、ごほっ!」
 ついにティアは吐血してしまった。そして、あまりの衝撃と痛みに呼吸すらままならない。
(本当に、死んでしまう!)
 ティアは、今更ながらにレミリアの恐ろしさを実感していた。

 力の妖怪、吸血鬼。

 その力は恐らくまだ半分も出されていないだろうことは想像に難くない。もし本気だったらすでに屍とかしているに違いなかった。
「さぁ、どうする? もう少しで、死ぬわよ?」
 クックックッ、と喉の奥で笑うレミリア。それをぼうっとした視界で見上げるティア。
 どちらが勝者で、どちらが敗者か。一目瞭然のこの状況を見て、考えて、ティアはぐったりと壁にもたれかかった。
「……そう。おまえは、あくまでも自分の意思を貫き通そうと言うのね? 残念だわ。もう少し私の側にいてくれると思っていたのに」
「!」
 レミリアは握りこぶしを作り、そこに妖力を注ぎ込んだ。すると、真っ赤に燃えるような妖気がこぶしから噴出し、一本の紅い槍を作り出した。
「!! これは!」
「覚えているかしら、ティア? これは初めておまえと出会った時に見せた技。せめてもの手向けとして、これであなたを逝かせてあげる」
 紅い槍を振り上げ、レミリアは力をさらに込める。すると、紅い槍は一層紅く、長くなった。
 ティアはレミリアの出した紅い槍を見つめていると、つつっと涙が伝う感触がした。
(おかしいな、どうしてわたしは、泣いているんだろう? まだ、死にたくないから? まだ、戦えるはずだから?

 それとも、まだ、レミリアと一緒にいたいから?)

 ティアはそっと目を瞑った。
「……観念した、というわけね。さようなら、ティア――」
 レミリアはグッと体を反らして反動をつけた。そして、発現される力を宣言と共に腕に込める。
「神槍!!『スピア・ザ・グングニル』!」
 レミリアは紅い槍を投げつけると、槍がティアの体を貫く様を見ないよう、すぐに後ろを向いた。
 間もなく突き刺さる音とティアの断末魔の叫びが聞こえてくる、はずだった。
 だが、そのとき聞こえてきたのは、ドスッという槍が突き刺さる音でも、ましてや言い表せないような叫びでもなかった。それは、あまりにこの現状からは想像できないような美しい調べ。
 レミリアは耳を疑うようにして後ろを振り向いた。そこには、両手を組み、歌うティアの姿があった。
「ティ、ティア!!」
「〜〜♪」
 ティアはレミリアの声が聞こえないのか、レミリアに呼ばれたことも知らず、ただただ歌を歌い続けていた。

 それからどのくらいの時間が経ったのだろうか。
 レミリアは椅子に腰掛け、まだ歌い続けるティアを見つめながら、ティアの歌声に聞き入っていた。
(あの娘の歌声、そういえば今まで聞いたことがなかったわね。自分の力の発現がその歌声にあることを知っていたからこそ、歌わなかったのだろうけれど)
 レミリアは自分で淹れた紅茶を一口含み、またティアの歌に耳を傾ける。
(結果としてはティアを生かせることができたけれど、一歩間違えれば本当に死んでいたのよね。でも、ああでもしなければ自らの手で力を出そうとはしなかったでしょうし。私の運命を操る能力がなければどうなっていたことか……)
 今更ながら、大丈夫だと分かっていた結末の信頼性に少々の疑問を浮かべるレミリアだった。
(それにしても、なんて澄んだ歌声なのかしら……)
 レミリアはもう一度紅茶を口に含むと、歌を聴きながら目を閉じた。


「お嬢様! お嬢様!」
「ん、ん?」
「ん? じゃありませんよ。起きてくださぁい。はら、もう太陽はとっくに沈んでいますよ」
 レミリアは一体何が起こったのか、起こっているのかすぐに分からなかった。ややぼぅっとした状態で現状を確認する。
 どうやらテーブルに伏せたまま寝ていたらしい。
 とっくに冷めてしまった紅茶が入ったカップがあの光景を思い出させる。
 ティアへ向けて投げつけたグングニル、聞こえてきた歌声、そして、歌い続けるティア。
 レミリアはそこまで思い出し、ようやく側にいる人物がティアであることに驚いた。
「ティア! ティアなのね?」
「ど、どうされたのですか? わたしはお嬢様の言うところの『ティア』、ですよ?」
 ティアは冷めた紅茶の入ったカップを下げ、トレイに乗せると、カートに置いた。何が楽しいのか、鼻歌を歌っていた。
「ティア、その……大丈夫かしら?」
「はい? わたしはいたって大丈夫ですよ? それよりも今のお嬢様の方がよっぽど大丈夫ですか、と聞きたいですよ」
「ふふ、そうね。私としたことが……」
 軽く笑うと、椅子から降り、窓の外を眺めた。外は既に暗く、きらきらと星が瞬き始めていた。
「ところで、お嬢様。わたしの歌声、お聞きになられたのですね?」
「!」
 レミリアはティアの言葉を聞いて後ろを振り返った。
「やはり、聞かれたのですね……もうお分かりだと思いますが、わたしの能力はその歌声に秘められています。わたしはこの能力のことを『安らぎを与える能力』と名付けました。安らぎと言っても、中身は究極の物質安定化能力。決していい能力とは言えません。ですが、これがわたしの力の正体なのです。わたしの声の波長と一致した時、全てのものは消えてしまいます。わたしはこの力によって一人の男性を消してしまいました」
 レミリアは何も言わず、ティアの言葉に耳を傾けていた。
「これがわたしの終わりであって、全ての始まりだったのです。そして、五年という歳月を経た後、わたしはこの世界にいました」
 ティアはふぅ、と一息つくと窓際の、レミリアの隣に立った。そして、レミリアを見てにこりと微笑む。
「今は、こうしてお嬢様の隣にいるのです。もう、迷うことも、逃げることもいたしません。わたしは、幻想郷、紅魔館がメイドにしてレミリア・スカーレット嬢の忠実なる僕、クウィンティア・エルディーネでございます」
 ティアはスカートの端をちょんと摘んでお辞儀をした。
「ふふ、このレミリアが引き入れたのだもの、そうでなくては困るわ」
 レミリアもティアを見て、ふっと微笑んだ。

 …………

「先代は恐ろしい能力の持ち主だったのですね」
 咲夜はページを捲りながら、そして、ふむふむ、と呟きながらパチュリーに話しかけていた。
「あら、あなただって、考えようによっては恐ろしい能力だと思うけど?」
「そ、そうでしょうか」
「隣の芝生は青い。そういうものよ」
「……」
 咲夜は古い日記を眺めながら、遠い昔の二人を想像した。
 自分とレミリアという、今の二人と比べながら。
「やめなさい、咲夜。そうやって昔と比べるものではないわ」
「……そうですね。先代は先代。わたしはわたしですよね。お嬢様もきっとそう思っていらっしゃるに違いありません」
「……だと、いいわね」
 パチュリーは本に顔を埋めながら、ボソッと呟いた。

  第三章 安らぎを与える能力 終わり




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